忙しい現代人が健康寿命を延ばすために、いますぐ気をつけるべきこととは?

農林水産省の調査によると、弁当・惣菜など加工食品の世帯別食料費支出割合が50%を超えたのに対し、生鮮食品は30%を切っています。この傾向は今後ますます強まると予測されています。
 
これら加工食品で食事を済ませることを、外食・内食(自宅で調理する食事)の中間として「中食」と呼ぶことがあります。外食よりも安く、内食よりも手軽であるため、全世帯で利用が増えているのです。

しかし健康について考えた時、本当にこのままで良いのでしょうか。福岡市内の高齢者福祉施設で栄養指導を行なっている管理栄養士の山下圭子さんに話を聞きました。

食べている時の気持ちが大切

interviewer
外食や中食が増えています。「手作りの食事」とは何が違うのでしょうか。
 
山下 まず、出来合いのものを食べているときにどんな気持ちなのかが大切だと思います。

たとえば、お店で買った弁当は蓋を開ければすぐに食べられるじゃないですか。せいぜい考えるのは、「どれから食べようかな」くらい。食事って「今日はこれに何をトッピングしようかな」とか考えるプロセスも大切なんです。

料理には、料理をする人だけの特権があります。料理をするとすごく薫りを感じることができるんです。たとえば温かいスープだったら、味が馴染んで、出来上がる寸前のあの薫り。あるいは茹でたときのフワっていう薫り。あれを楽しめるのは料理する人の特権です。

ひょっとしたら多くの女性は、それがあるから長生きするのかなって思うほどです。料理をすることで、五感が満たされます。コーヒーを淹れるときの、あの部屋いっぱいの香りもそうですよね。

「中食」も、忙しくしているときの手助けとしては良いと思うんですよ。今は野菜が豊富に入った、彩りの良い商品もたくさんあります。生活の手助けとして使う分には全然問題ありません。それでも何か「プラス一品」を自分で足すことで、結果が全然違います。

私たちは何気なく毎日食べていますけど、老人ホームの入居者さんと接することで、食べることについて考えさせられます。私たちは当たり前のように出てきた料理を食べますけど、認知症になると食べ方がわからなくなることがあるんですね。

「これは食べ物だ」と認識することを、私たちは無意識にやっているということです。「わー!美味しそう」っていうじゃないですか。そう思うときって凄くテンションが上がって、食べる準備万端なんです。それが消化・吸収にも影響するっていうデータがあって、「美味しそう」って思って食べると、ちゃんと消化・吸収してくれるんです。

消化・吸収に際して、胃や腸の働きはコントロールできません。私たちが唯一コントロールできるのが、噛むことなんですね。噛むって、ただ食べ物を細かくしているだけではなく、実は消化の第一歩なんです。

口の中で唾液と混ざることで消化が始まっていますし、よく噛んで細かくして胃に送ることで、胃の負担も軽くしているんです。そうやって食べたものが身体になっていくわけですから、同じ「食べる」でも、何をどんな気持ちで食べるかで全然違ってきます。

あるいは同じカロリーでも、スープとか野菜とか、多くの品数から摂ると、得られる栄養素が多くなります。たとえばビュッフェでも、レストランでの注文でも、私たち栄養士はどうしても栄養のバランスを考えるんです。皆さんにも、身体に良い物を食べて欲しいと思います。

外食が増えるとどうしても栄養が偏りがちになったり、味が濃くなったり、費用もかかるし。それが、自分で買い物して料理することで、身体にも良いわけです。

1本で調理ができる「魔法」のスパイス

interviewer
忙しい人が自宅で一品作るときに、手早く美味しく作るコツってありますか?

山下 私は管理栄養士ですが、料理そのものはそれほど得意ではありません。たくさんの調味料を使って、手間をかけて作るのが苦手なんです。そんな私でも、手軽に美味しく作れる秘密が「マジカルスパイス」です。

マジカルスパイスを知ったきっかけは、勤務先の介護施設の売店でサンプルをいただいたことでした。

初めは鶏の唐揚げ用に勧められたんですが、キュウリとかトマトにも合うよと言われてかけてみたら凄く美味しくてびっくりしたんです。それ以降は、自分で色んな料理に試してみて、たくさんレシピを考案しました。私にとってマジカルスパイスは塩胡椒代わりです。

お弁当を作るときは野菜炒めやコールスローにも使いました。これ一本で料理ができるんです。しかも、どういうわけか同じ味にならない。マジカルスパイスの「魔法(マジカル)」って、そういう意味なんだなと思いました。

マジカルスパイスは素材の味と溶け込んで、スパイスの味だけ主張するのではなくて、素材とスパイスが混ざり合う感じです。これがあったら、苦手な人でも料理ができると思います。

たとえば、カレーライスに山盛りの千切りキャベツを添えると、よく噛んで食べることができます。そこで味が足りなければ、キャベツにマジカルスパイスをかけるだけで美味しくなります。

私のマイブームは、「野菜の塩漬け」で、浅漬けというと普通は昆布や酢を使うんですが、面倒なので、野菜を切って塩を振ってビニール袋に入れて揉んだだけで冷蔵庫に入れます。それを翌朝取り出して、チーズと合わせてマジカルスパイスをかけるだけですごく美味しくなります。

主食のご飯も大事です。一回の食事のなかでご飯が美味しいだけで、他のおかずも美味しく感じるんです。

1人暮らしなどの場合は電子レンジで一合だけ炊くという方法もあります。炊飯器で一合だけ炊いてもあんまり美味しくないんですが、電子レンジだと一合でも美味しく炊けます。朝、一合炊けば、ご飯2杯分なので、朝食とお弁当に使えます。

冷凍ご飯を美味しく食べるコツもあります。よく「粗熱をとる」と炊いたご飯を冷まして冷凍される方もいますが、実は温かいうちにラップをすると、蒸気になっている水分も一緒に閉じ込めるので、レンジで温めるときにパサっとならないんです。冷めてから冷凍すると水分が抜けているんで、どうしてもパサパサになってしまいます。

冷凍で常備するのにオススメなのが、コーンとインゲンです。コーンは黄色で、インゲンは緑色ですよね。料理をしていて「色が足りない」と思ったときに加えるだけで全然違います。料理って色合いが凄く大事なんです。ニンジンもそうですけど、カラフルな野菜って栄養価が高いんですよ。少量入れるだけで、栄養バランスがグッと良くなります。

高齢者に推奨される鶏むね肉

interviewer
健康で長生きするためには、何に気をつけたら良いですか?

山下 いくら長生きしても、足腰が立たなくなると、生活意欲が無くなります。自由に動けない、行きたいとこに行けないということは、買い物にも行けない、しまいにはお手洗いに行くのも億劫になります。

そうするとベッドや椅子の上にいる時間が長くなります。そういう時はお腹も空かないので、トイレにあまり行かなくなります。何もしたくなくなる。

よく老人ホームのご入居者が「もう生きていたくない」などと仰いますが、動かないことが原因なんですね。死にたくはないんだけど、生きていたくもない。だから、寝たきりにしてはダメなんです。

自分で排泄できるっていうのが凄く大事で、それができないと水を飲むことさえ控えてしまうようになります。食べることと排泄することはつながっているんです。

立ち上がるときに必要なのは太ももの筋肉ですが、ここの筋肉は何歳からでも鍛えることができます。その筋肉を作るのに必要な栄養素が、鶏むね肉には豊富に含まれています。さらに、疲労回復にも効果があることがわかっています。

鶏むね肉は、ひと昔前はアスリートや成長期の子どもに良いと言われていたのですが、今はすべての年齢、とくに高齢者に推奨されています。だから、長生きしている人には意外にお肉好きが多いんです。

『アスリートシェフのチキンブレストレシピ』という鶏むね肉専門のレシピ本もありますので、ぜひ参考にしてみてください。味付けにマジカルスパイスを使っていただくと、一層美味しくなりますよ。

山下 圭子(やました けいこ)
福岡女子大学卒業後、料理研究家村上祥子氏に師事。現在は福岡市の(株)日立博愛ヒューマンサポート「有料老人ホーム フィランソレイユ笹丘」に勤務。2016年に荻野伸也氏との共著『アスリートシェフのチキンブレストレシピ』(柴田書店)を出版。また、レシピサイト「クックパッド」にマジカルスパイスを用いたオリジナルレシピを多数掲載している。